Seesaw theorem の証明に関する備忘録
投稿日:2024/9/24
森脇,川口,生駒『モーデル–ファルティングスの定理』の 2.6 節「アーベル多様体の基礎事項」の seesaw theorem の証明は少し行間が広いように思えたので,考えたことを記録しておく.以下では F は標数 0 の体とする.また,F 上の多様体とは F 上有限型な整スキームのことである.
定理 1: Seesaw theorem [MKI, 2.18]
X,T を F 上の絶対既約な代数多様体,L を X×T 上の直線束とし,X は F 上射影的と仮定する.このとき,
T1={t∈T∣L∣X×{t} は自明}
は T のザリスキー閉集合である.さらに,T1 に被約部分スキームの構造を入れ,p2:X×T1→T1 を射影とすると,ある T1 上の直線束 M が存在して L∣X×T1≅p2∗M が成り立つ.
先ず,次の補題が幾度か必要になるので予め引用しておく.
補題 2: Stacks 33.9.3
k を体,X を固有 k スキームとする.
1–6. 略
7. X が絶対被約かつ絶対連結ならば H0(X,OX)=k である.
8. X が絶対整ならば H0(X,OX)=k である.
完全体上では単なる被約性から絶対被約性が従う (Stacks 33.6.3) ことから,特に今は標数 0 の体 F 上で考えているので,被約且つ絶対既約ならば絶対整である.これらを用いれば
X×T1→T1 の各ファイバー X×{t} 上で L は自明であるから dimκ(t)H0(X×{t},L∣X×{t})=1 である.
という箇所はすぐに導ける.
その後の
自然な射 p2∗M→L (引用者注: M=p2∗L.Grauert の定理よりこれは直線束である) は各ファイバー上で自然な射
H0(X×{t},L∣X×{t})⊗OX×{t}→L∣X×{t}
に一致し,L∣X×{t} は自明なので p2∗M≅L となる.
という箇所は次のようにすれば分かる.
先ず,X は F 上の射影多様体なので固有でもあり,従って p2:X×T1→T1 は固有射なので,Descartes 図式
X×{t}↓i′X×T1p2′p2t↓iT1
に関する固有基底変換定理 (例えば [Va, 25.1.6]) を考えれば
(p2∗p2∗L)∣X×{t}=i′∗p2∗p2∗L≅p2′∗i∗p2∗L(図式の可換性より.)≅p2′∗p2′∗i′∗L(固有基底変換定理より.)=p2′∗p2′∗(L∣X×{t})
が得られる.ここで p2′∗(L∣X×{t}) はアフィンスキーム t=Specκ(t) 上の準連節層なので
p2′∗(L∣X×{t})=H0(t,p2′∗(L∣X×{t}))∼=H0(X×{t},L∣X×{t})∼
である.従って p2′∗p2′∗(L∣X×{t}) は,スキーム上の層の引き戻しの定義通り考えれば
p2′∗p2′∗(L∣X×{t})=p2′∗H0(X×{t},L∣X×{t})∼=p2′−1H0(X×{t},L∣X×{t})∼⊗p2′−1OtOX×{t}≅H0(X×{t},L∣X×{t})⊗κ(t)OX×{t}
となる.ここで H0(X×{t},L∣X×{t}) 及び κ(t) は X×{t} 上の定数層として考えている.L∣X×{t} が自明であることと補題 2 を用いればこの層が OX×{t} と同型であることも分かる.
参考文献