準 Abel 多様体の完全列はその torus/Abelian part の完全列を導く

投稿日:2025/10/14

数学

代数幾何学

代数群

メモ

kk を標数 0 の代数閉体とする(もしかしたらもう少し緩められるかもしれないが,取り敢えずこの設定で考える).kk 上の可換代数群の圏は Abel 圏である(この事実は一般の体上で成立する [Mil, 5.62]).以下,完全列などは全てこの圏において考えることとする.準 Abel 多様体 (semi-abelian variety) とは Abel 多様体をトーラスによって拡大したもの,即ち代数群 GG であって,

0TGA0\begin{align*} 0 \to T \to G \to A \to 0 \end{align*}

が完全列となるようなトーラス TT と Abel 多様体 AA が存在するものである.TTGG の極大トーラスであり,TTAAGG から一意的に定まる.TTGG の torus part,AAGG の abelian part と呼ぶ.次の命題を示したい.

命題

準 Abel 多様体からなる完全列

0G1G2G30\begin{align*} 0\to G_1 \to G_2 \to G_3 \to 0 \end{align*}

が与えられたとする.GiG_i の torus part と abelian part をそれぞれ TiT_iAiA_i とすると,(適切に射を定めると)図式

0 0 0 0T1G1A10 0T2G2A20 0T3G3A30 0 0 0\begin{CD} @. 0 @. 0 @. 0 \\ @. @VVV @VVV @VVV\\ 0 @>>> T_1 @>>> G_1 @>>> A_1 @>>> 0\\ @. @VVV @VVV @VVV\\ 0 @>>> T_2 @>>> G_2 @>>> A_2 @>>> 0\\ @. @VVV @VVV @VVV\\ 0 @>>> T_3 @>>> G_3 @>>> A_3 @>>> 0\\ @. @VVV @VVV @VVV\\ @. 0 @. 0 @. 0 \end{CD}

の全ての行と列は完全であり,全ての四角形は可換である.

証明

一般に,トーラスから Abel 多様体への代数群としての射の像は,Abel 多様体の閉部分群なので proper だが,トーラスの商なので affine かつ連結でもある [Mil, 5.29, 5.59].このような代数群は 0 しか存在しないので,トーラスから Abel 多様体への射は零射以外存在しない.従って TiGiGi+1Ai+1T_i \to G_i \to G_{i+1} \to A_{i+1} は零射であるので,核と余核の普遍性から上の図式を可換にする TiTi+1T_i \to T_{i+1} 及び AiAi+1A_i \to A_{i+1} が存在する.

T1T2T_1 \to T_2 が単射であることと A2A3A_2 \to A_3 が全射であること,T1T2T3T_1 \to T_2 \to T_3 が零射であることは明らか.従って T1Ker(T2T3)=G1T2T_1 \subseteq \ker(T_2\to T_3) = G_1 \cap T_2 である.非自明な unipotent subgroup を含まない代数群はトーラスであるので [Mil, 17.25],T2T_2 がトーラスであることから G1T2G_1 \cap T_2 もトーラスであることがわかる.T1T_1G1G_1 に含まれる極大トーラスであるので,T1=G1T2T_1 = G_1 \cap T_2 である.従って左の列は T2T_2 において完全である.

下の 2 行に対して蛇の補題を適用すると,完全列

A1Coker(T2T3)0\begin{align*} A_1 \to \coker(T_2 \to T_3) \to 0 \end{align*}

が得られる.ここで Coker(T2T3)\coker(T_2 \to T_3) は affine であるが,proper variety から affine variety への射は定数しかないので,A1Coker(T2T3)A_1 \to \coker(T_2 \to T_3) は零射である.従って Coker(T2T3)=0\coker(T_2 \to T_3)=0,即ち T2T3T_2 \to T_3 は全射である.

左の 2 列に対して蛇の補題を適用すれば右の列の完全性も得られる.

参考文献